「社員が自発的に行動してくれない!」
「上司に提案しても、受け入れてもらえない」
「他部署の人との連携がうまくいかない。」
こうした課題を感じている方は、決して少なくありません。その原因は、個人の能力や意欲だけにあるのではなく、組織の構造そのものに起因している可能性もあります。企業の経営目的や事業内容、さらには外部環境の変化を踏まえながら、これからの組織体制に何が求められるのかを考えていきます。
なぜ今、組織の在り方を見直す必要があるのか
近年、ビジネス環境の変化はこれまで以上にスピードを増し、現場対応にも柔軟性や即応力が求められるようになっています。「いつものやり方」だけでは対応しきれない場面が生じることもあるのではないでしょうか。
従来の階層型・縦割り型の組織体制は、役割分担が明確で統制しやすいという強みがある一方、スピードや創造性が求められる場面では限界が見えることもあります。
こうした背景から、組織論では「セルフマネジメント型組織」や「ティール組織」といった考え方に注目が集まっています。上からの指示を待つのではなく、一人ひとりが目的に基づき自ら判断・行動する仕組みです。その柔軟さとスピード感は、その変化の激しい社会において必要性を増しています。
私たちイーバリューでも、数年前からこの「セルフマネジメント型組織」の考え方を取り入れ、組織体制の見直しを進めてきました。
本記事では、まず組織形態の違いを整理しつつ、導入に至った背景と、その過程で見えてきた課題や対応策をご紹介します。
組織構造の違いを知る
階層型組織とは
階層型(ヒエラルキー型)組織とは、上司・部下の関係性が明確で、役職ごとに咳委任や決裁権限がはっきりしている構造です。管理や統率に優れる一方で、意思決定には段階的な承認フローが必要となり、スピード感に欠ける場面も出てきます。
また、指示や命令をもとに行動する場面が多く、メンバーの主体性は抑制されやすい傾向にあります。
こうした構造は、特にルーティン業務やマニュアル化された現場では効果を発揮しますが、変化対応や創造的な取り組みを求められる場面では限界を感じることもあります。
セルフマネジメント型組織とは
セルフマネジメントと聞くと「自己管理」をイメージする方も多いかもしれませんが、ここでいう「セルフマネジメント型組織」とは、個人が自律的に判断し、行動することを前提とした組織運営の形です。
ただし「自由に好き勝手に動く」ということではなく、組織の目的や価値観をしっかり共有したうえで、各人が役割と責任を持って判断・行動していきます。早い意志決定ができ、変化に対する柔軟性やスピード、そして個々の創造性が活かされやすくなります。
一方で、経験や知識不足により判断に迷いやブレが生じたり、情報の発信や共有に個人差が生じたりしやすくなります。
このような構造は、変化の激しい市場環境にある業種やスタートアップの企業・プロジェクトなどに適しています。
両者の比較
次に、両組織構造の特徴を簡単に整理します。
どちらの組織が「正しい」ということではありません。大切なのは、自社の事業内容や組織の目的、メンバー構成に応じて、適切な形を選び、必要に応じて変化させていく柔軟さです。

私たちが組織体制を見直した理由
ここからは、私たちイーバリューがどのような背景で組織体制を見直し、どのように「セルフマネジメント型組織」を運用しているかをご紹介します。
同様の課題を抱えている企業の皆様にとって、ご参考になれば幸いです。
背景と課題意識
近年、お客様からのご相談や期待も多様化し、スピード感のある対応が求められる場面が増えてきました。当社でも以前は階層的な組織を採用しており、一定の機能性がありました。
しかし、事業内容の変化とともに限界も見えてきました。例えば、当時の社内では次のような状況が頻繁に発生していました。
・部門間のわだかまりだから、必要な情報が十分に共有されず、非効率な業務が繰り返され、十分に成果につながらない。
・若手社員が上司の顔色をうかがうばかり…。意見を言えないまま、誤った判断をする。
・自分の担当業務の最適化を優先し、周りで不具合があっても無関心。ミスやトラブルが発生してもどこか他人事…。
このような状態では、スピード感を持って業務を遂行することが難しく、サービスの品質にも悪影響を及ぼしかねません。さらに、新サービスの開発など、創造性が求められる業務が増える中で、階層型の耐性ではメンバーそれぞれの力を十分に引き出すことが難しいと感じるようになりました。
こうした課題を解消し、今後の事業展開に対応していくために、当社では「セルフマネジメント型組織」の導入に踏み切りました。
組織構造の変更とその工夫
セルフマネジメント型組織の導入は、単なる制度変更ではなく、組織文化そのものの転換をともなう取り組みです。部署の廃止や上司・部下という関係性の解消、それに基づく役職や役職呼びの廃止など、次のような工夫と配慮を重ねながら、慎重に移行を進めていきました。
・事前の相談と合意形成を丁寧に実施
役割者には制度変更について事前に相談するなど配慮しながら進めました。変更時には代表自らが説明を行い、これまでの組織体制とセルフマネジメント型組織の違いや特徴、イーバリューに見られる課題、今後必要な組織のあり方などを丁寧に共有しました。こうした合意形成の積み重ねが、不安や誤解を生まず、円滑な移行につながったと感じています。
・社外対応には役割表記を柔軟に活用
組織内では役職を廃止しましたが、社外とのやり取りでは必要に応じて役職表記を活用しています。これにより社外からの信頼性やスムーズなやり取りを保ちつつ、内部では柔軟なチーム体制を維持できるよう工夫しています。
・判断と行動の自律性を支える明確な役割設定
セルフマネジメント型組織では、各メンバーが目的を踏まえて自ら動くことが基本ですが「自由に動けばよい」というわけではありません。意見が分かれた際の最終的な意志決定者や、そのプロセスなど、責任の範囲と役割分担をあらかじめ明確にするよう努めました。
・礼儀やマナーはこれまで通り大切に
上司・部下の概念がなくなったとはいえ、関係性まで全てフラットになるということではありません。職場での基本的な礼儀やマナーは、これまでと変わらず厳格に守っています。

導入から定着まで
導入直後は、やはり多少の混乱はありました。「つい元の上司に判断を仰ぐ」「役職名を呼んでしまう」「最終責任者や役割が曖昧な状態で進めていた」といった場面もあり、日常の中で何度も話し合いとすり合わせを繰り返しました。
それでも、1年~1年半ほどかけて「自ら考えて動く」ことが自然とできるようになってきました。制度を変えただけで人が変わるわけではなく、定着には時間とすり合わせを重ねることが必要だということを改めて実感しています。
また、運用するなかで都度改善し、最適化させることも重要です。
導入して見えた、メリットと課題
メリット
導入を通じて、次のような良い変化が見られました。
・スピードと正確性の向上
“伝言ゲーム”ではなく、メンバー同士が直接つながってやり取りすることで、連絡の手戻りや伝達ミスが減りました。特に現場の気付きや要望が、素早く必要な相手に届くようになり、対応までのスピード感が上がっています。
・主体性の強化
一人ひとりが、目的を理解したうえで「どう動くか」を自分で判断するようになりました。指示を待つのではなく、役割と責任を持って行動する機会が増え、納得感のある働き方につながっています。
・アイデアの創出
上下関係にとらわれず、意見を出しやすくなったことで、改善案や新しい視点が自然に出てくるようになりました。若手メンバーからの提案が増えた点も大きな変化です。
・柔軟なチームづくり
部門・部署の考えを取っ払うことで、業務内容に応じて必要な人材を組み合わせる体制が取りやすくなりました。専門分野を横断するテーマにもスムーズに対応できるようになり、連携の幅が広がっています。
課題と対応策
もちろん、メリットばかりではなく、次にあげる課題も運用するなかで出てきました。
・理念や目的の理解の差
判断の軸となる組織理念や目的の理解度に差があり、初期は行動にブレが出る場面も見られました。定期的なミーティングや社内SNSの活用、雑談などの対話の機会を設け、全体の認識をすり合わせるようにしました。
・情報の見えづらさが課題に
上司による進捗管理や承認ステップがないため、自分から情報発信をしない人の場合、周囲から見えづらくなることも発生しました。それらは、社内SNSやミーティングを活用し、発信と情報の可視化を促す仕組みを整備しました。
・経験の浅いメンバーがは判断に悩む
新人や若手社員にとって「どこまで自分で判断してよいのか」「誰に相談したらよいのか」が分からず、動きが止まってしまうといった事態になることも。ブラザー/シスター制度を導入するなど、安心して相談できる関係性とサポート体制を整えました。
組織に正解はない。だからこそ、変化に向き合う
セルフマネジメント型組織に「完成形」はありません。社内外の環境が変化すれば、組織の形もまた変わるべきだと私たちは考えています。階層型組織にもセルフマネジメント型組織にも、それぞれに強みと課題があります。大切なのは「今、自社にとってどのような組織体制が最適か」を見極め、柔軟に進化させていく姿勢だと思います。このセルフマネジメント型組織も、今後さらなる変化が必要になるかもしれません。
私たちが掲げる「MAKE NEW STANDARD.」はこうした変化の先にあると感がています。これからも常に常識の在り方を考え続け、新しい基準を社会に提供していきます。私たちの取り組みが、よりよい組織マネジメントの一助となれば幸いです。
