—なぜ、私たちは健康経営に取り組むのか?制度ではなく、文化へ ― 全社員が取り組む理由と仕組み

—なぜ、私たちは健康経営に取り組むのか?制度ではなく、文化へ ― 全社員が取り組む理由と仕組み

健康経営は、認定取得や制度整備だけでは形骸化しやすいものです。「取り組んではいるが、社員に根づかない」という壁にぶつかる企業は少なくありません。なぜイーバリューでは、全社員が自然に取り組む文化をつくれたのか。その原点と仕組みを紹介していきます。

 

「身体を壊したら、意味がない」 -健康経営を始めたきっかけ

以前勤めていた会社で、代表の水野は働き盛りの30~40代の社員たちの姿を間近で見てきました。生活習慣病を抱え、常に体調が優れない。薬を手放せない日常。飲み会や社内イベントへの参加も制限され、通院はおろか入院を余儀なくされる社員もいました。本人のパフォーマンスが落ちれば、周囲の業務にも影響が出ます。そして何より「仕事ができるのに、したいのにできない」というジレンマが本人を蝕んでいく。そんな光景を、水野はずっと見てきました。

当時、感じていたのは「なぜ、こんなことになってしまうのか」という根本的な疑問でした。仕事への意欲はある。スキルも経験もある。それなのに、身体の不調がすべてを阻んでしまう。

努力や熱意だけでは補えない壁が、目の前にあったのです。「どんなに仕事を頑張っても、身体を壊したら意味がない」その体験こそが、水野を健康経営へと向かわせた根本の動機です。若いうちから健康活動に取り組み、いきいきと長い仕事人生を全うできる組織をつくりたい。その想いは、今も変わりません。

 

福利厚生ではなく「経営」として捉える

健康「経営」という言葉には、明確な意図があります。従業員の健康を、個人の問題としてではなく、経営的視点から戦略的に実践するということです。水野はこう語ります。「健康経営とは、自分と家族、そして会社の仲間が気持ちよく人生を送るための経営手法だと思っています。認定を取ることが目的ではなく、それが日常になることが目的です。」

よくある誤解のひとつは「健康経営=福利厚生の充実」という見方です。社員ジムの補助や人間ドックの費用負担 ——こうした施策は大切ですが、それだけでは健康経営とはいえません。大切なのは、健康を「会社が与えるもの」ではなく「社員一人ひとりが自分事として向き合うもの」として位置づけることです。

業務・年齢・経験年数に関係なく、誰もが取り組める。健康への向き合い方は、仕事への向き合い方にそのままつながります。そして、健康経営を通じたコミュニケーションが、組織づくりの土台になる——。これが、イーバリューが健康経営に向き合う際の、基本的な考え方です。

 

ランナーズ・ハイ!が体現するもの

その象徴的な取り組みが、ランニングサークル「ランナーズ・ハイ!」です。

メンバーのほぼ全員が、社会人になってから走り始めました。年齢・性別・経験年数は問いません。タイムを狙う人も、楽しく完走を目指す人も、スタイルは自由。全国のマラソンイベントに出場しながら、活動を続けています。

「走ることが、仕事や自分の人生にいい影響を与えてくれた」「社内外問わず、ランニングがコミュニケーションのきっかけになっています」——運動経験の有無にかかわらず、メンバーからはこのような声があがっています。

なぜ、走ることがコミュニケーションのきっかけになるのでしょうか。レースに向けて練習する過程で、普段はあまり話す機会のない他部署の社員と自然と言葉を交わすようになります。「最近どのくらい走ってる?」「次のレースはどこに出る?」——業務とは切り離された話題が、人と人の距離を縮めます。そして、共に汗をかいた経験が、仕事上の信頼関係にも波及していくのです。

走ることが、単なる運動にとどまらない。仕事観や組織への帰属意識にまで波及していく。それがこのサークルの、本当の価値です。

 

文化をつくる、4つの仕組み

健康活動が全社員に根づいた背景には、意図的につくられた4つの仕組みがあります。

①社内SNSの活用

ランニングをはじめ、筋トレ・ロードバイクなど多様な健康活動を自由に投稿できる場をつくりました。計測記録や写真をゆるく共有し、気軽にコメントしあえる文化があります。「見てもらえると、もっと頑張れる」という感覚が自発的な参加を促し、部署やオフィスを越えた自然なコミュニケーションが生まれています。

ここで重要なのは「義務化しない」という点です。強制されたアウトプットは続きません。見せたくなる、つながりたくなる——そういう「場の空気」をつくることが仕組みの核心です。投稿が増えれば、それを見た別の社員が「自分もやってみようかな」と思い始める。小さな連鎖が、やがてその組織全体の文化をつくっていきます。

 

②クレドブックへの明文化

「プロフェッショナルとして心身ともに健康であること」を、クレドブック(※)にアクションとして明記しています。健康であることを個人の努力ではなく、プロとしての責任として位置づけることで「やっても、やらなくてもいい」という曖昧さをなくしました。イーバリューで働くプロとしての共通認識が、ここにあります。

言語化・明文化の力は、思った以上に大きいものです。「大切にしよう」という空気感だけでは優先順位が下がり、忙しい時期には後回しにされがちです。しかし、クレドブックに明示することで、健康はプロとしての姿勢の一つとして扱われるようになります。

※クレドブックとは:企業が大切にする価値観や行動指針(クレド=信条)を具体的にまとめた冊子のこと。経営理念を日々の業務に落とし込み、社員が自律的に判断・行動するための基準となります。

③健康強化月間

各自が自由にレベルを設定して健康目標を立てます。さらに、朝礼のディスカッションテーマにも健康が登場します。

・食事と運動、両輪で自分をアップデート

・その習慣『働き続ける力』になってる?

・健康診断は自分への通知表と思って向き合おう

——定期的に健康を「自分ごと」として考える場を設けることで、意識が継続する仕組みです。目標は画一的なものではなく、一人ひとりが自分のペースで設定できるのがポイントです。「週に2回、30分のウォーキングをする」「階段を使う」「週に3回、野菜を意識的に摂る」「終身前のスマホを減らす」——どんな小さな一歩でも、自分で決めて取り組むことに意味があります。完璧を求めるのではなく、継続できることを重視する。この姿勢が、長期的な健康文化の醸成につながっています。

 

④マラソン特別休暇制度

会社公認レースでハーフマラソンを完走すれば翌日午前休み、フルマラソンなら翌日終日休みが与えられます。挑戦したい気持ちに、会社が制度で応えます。

この制度の話をすると、お客様にも学生にも例外なく驚かれます。それほど珍しい取り組みですが、だからこそ「会社が本気で応援している」というメッセージが伝わるのだと思っています。この制度がもたらす効果は、単なる休暇取得以上のものがあります。「会社が認めてくれている」という実感が「初めてだけどレースに挑戦してみよう」「練習の成果をおもいっきりぶつけよう」という気持ちの後押しになっています。

 

健康経営が、組織の文化を担う

健康活動を通じて生まれるコミュニケーションは、業務上の連携や職場の心理的安全性にもつながっていきます。「あの人は一緒に走った仲間だ」という共通体験が、日常の業務の中でも自然な協力関係を生み出します。また、健康に向き合うことは、自己管理能力の向上にもつながります。食事・睡眠・運動を意識する習慣は、仕事のパフォーマンスを高めるだけでなく「自分の状態を把握し、整える」という力を育てます。こうした力は、仕事への取り組み方や物事への向き合い方にも良い影響を与えていきます。働き方、仕事への姿勢、人との関わり方——社員一人ひとりの日常に溶け込み、組織の当たり前になること。それが、文化になるということです。

健康経営は、ゴールのある取り組みではありません。続けることそのものが目的であり、続けることによってはじめて組織に根づいていくものです。なお、イーバリューは2026年に健康経営優良法人(ネクストブライト1000)およびスポーツエールカンパニーの認定を受けています。ただし、それは結果であって目的ではありません。水野はこう締めくくります。「健康経営は、認定を取るためのものでも、制度を整えるためのものでもありません。自分と家族、そして会社の仲間が気持ちよく人生を送る。そのための経営手法です。それが日常になることを、私たちはこれからも続けていきます。」

 

 

▼『ランナーズ・ハイ!』の活動について、もっと知りたい方はこちら

 

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