ニューノーマル組織の会議。社員の視座を上げる『ガバナンスミーティング』

ビジネスの流れが加速している今、社員一人ひとりに意思決定権があり、社員の意思によって目的・目標の達成ができる組織形態が注目されています。イーバリューで採用している「セルフマネジメント型組織」もその中の一つです。そんなセルフマネジメント型組織の中で、意思決定の場として誕生したのが「ガバナンスミーティング」です。本記事では、その特徴と具体的な効果、導入後の課題について解説していきます。

ガバナンスミーティングとは?

セルフマネジメント型組織の意思決定の場として誕生

イーバリューが採用しているセルフマネジメント型組織では、縦割りかつ固定の部署ではなく、社員一人ひとりが有機的に繋がり合うプロジェクト制で業務を行い、合議制で物事を決定していきます。各プロジェクトの施策や、関係者が限られる議題はプロジェクトミーティングで決めていきますが、全社員に大きく関わる内容や、さまざまな立場からの意見が必要な議題もあります。それらを取り扱う場として誕生したのが「ガバナンスミーティング」セルフマネジメント型組織と同じく個人の意思決定に着目する“ティール組織“では、ガバナンスミーティングは、「仕事をやり遂げるための議論とは別の、役割や協力に関する問題だけを話し合うミーティング」という意味で使用されますが、イーバリューでは、「全社に関わる重要事項を議論するミーティング」としています。セルフマネジメント型組織の導入とともに運用をスタートして以来、ブラッシュアップを重ねて、現在の形になりました。

イーバリューでは、「2027年までに10のグループ会社と10人の社長をつくる」という中期ビジョンを掲げており、新規事業や新サービスの誕生、社内制度の改革、社員の成長のために欠かせない場となっています。

ガバナンスミーティングの概要

  • 毎週月曜日の午前に実施
  • 参加者は12名
    一般的な会議の適切な上限人数や、全社的な意思決定の場であること、また実際の様子から12名になりました。
  • 投票制によって、選抜されたメンバーが参加する
  • 議題は「新規事業・新サービスの提案」「社内の課題解決について」「新制度の提案」など全社での検討に値するもの全て
  • 議題を挙げる場合は、「議題」と「到達地点」を原則前日までに社内SNSにアップする

▼社内SNSに議題をアップする様子


ここからは、より詳しくガバナンスミーティングの特徴とそれによる効果を紹介します。

ガバナンスミーティングの特徴

重要事項を議論することで社員の視座が上がる

ガバナンスミーティングでは、経営層やプロジェクトリーダー、人事が企画・決定するような内容を議論します。

例えば、コロナ禍で自社オフィスを拡張すべきかどうか、新規事業・新サービスの提案と検討、新卒の採用要件、社内制度や人事制度で見直すべき点についてなどを議論・検討します。どれも自社の現在の状況や課題だけでなく、会社の将来ビジョンや自分たちのミッション等も踏まえて考える必要があります。また、ときには経営やマーケティングの知識が必要になることもあります。もちろん一人の社員として、現場の状況を具体的に話したり、エピソードを話したり、個人の意見を発散することも多いですが、常に“イーバリューとしてどうするか”の視点が求められるため、会社目線で考える癖がつきます。

いくつか実際の議論の内容をご紹介します。

全社目標も“自分事”若手社員が全社を動かした

イーバリューでは、毎年「今年のテーマ」が年始に代表から発表されます。2021年のテーマは業務改善や改革に関する内容でした。ガバナンスミーティングで、当時2年目の社員が、「改善提案制度」の提案を行いました。それは、全員が毎週1つ以上、身の回りの改善を社内SNSで上げるという内容でした。一般的には、他人事になりがちなトップダウンで決定された内容に若手社員が自発的に取り組み、全社を巻き込んで影響を与えた議題です。

新規事業を全社で揉む。ノウハウが共有され中期目標に近づく

新規事業の提案も議論の対象です。提案自体も、それに対するフィードバックもマーケティングの知識が必要になります。提案のたたき台から実行までをガバナンスミーティングで共有することで、新規事業立案の流れや留意点、ノウハウを知ることができ、参加者全員の学びと刺激に。会社全体として、「10のグループ会社と10人の社長をつくる」という中期目標に近づくことができます。

投票でメンバーを厳選。成長と風通しの良さを高める

当初は、全社員が参加していたガバナンスミーティング。しかし、社員数が増えるにつれて参画意識の低下、発言するメンバーの偏り、ミーティング時間の増加という課題も出てきました。

そこで参加メンバーについて投票制を導入し、メンバーを減らすことに。

ミーティング終了後に参加者同士で投票をおこないます。参加者は、発言の質が高いと思った人、5名に投票し、集計。投票数が多い、上位9名が勝ち残り、下位3名を参加していないメンバーと入れ替えるようにしました。入れ替え人数や票数も、検証を重ねて適切な数を決定しました。

また、投票時に留意する「4箇条」を設定し、投票基準に大きなブレがないように工夫しました。

ガバナンスミーティング4箇条

・量より質を重視する
・票を取るための発言は禁止(あれば都度注意)
・声の大きさに騙されないようにする
・期末効果・ハロー効果に注意する

入れ替えメンバーの決定方法は、毎日朝礼時に行われるディスカッションの中で「ベスト発言賞」を獲得する、ガバナンスミーティングの議事録を担当するなど参加意欲の高いメンバーが選ばれるようになっています。

投票制を導入したことで自身の発言に対する意識が高まり、課題も解消しました。発言の質に課題意識のあるメンバーを中心に、ガバナンスミーティングへ参加することや、獲得票数のアップを目標に自己研鑽に励んでいます。また、実力のある若手や、積極性の高い新人の存在・発言が埋もれることがなく、若手(新卒入社3年以内)社員が40%を占めるイーバリューにより適した会議体になりました。

求められるのは、発言の”質”。自身の力が試される。

「4箇条」でも紹介した通り、ガバナンスミーティングでは、「量より質」の発言が求められます。
議題は、新規事業の提案、社内制度の改革、プロジェクトで発生した大きなエラーの共有と振り返りなど様々です。
中には、知識や経験のない分野のものもあります。
その中で、発言するためには、ビジネスの知識や言語能力、思考力など様々な能力が必要になります。

さらに、自身の発言がミーティングに貢献できたかどうかは、投票結果を見れば一目瞭然。
投票結果や、他の参加者からのリアクションを見て、自身の力不足を痛感することも多々あり、
自身の能力が試される場となっています。

立って、笑って、会議。クリエイティブな発言を促す

ただ、常に緊張感が漂う雰囲気かというとそうではありません。

ガバナンスミーティングのもう一つの特徴として、ラフな雰囲気があります。会議室ではなく、フリーアドレス制を採用しているオープンなワーキングスペースに輪になって行います。席順も決まっておらず、役職・経年関係なくランダムに席につきます。中にはスタンディングデスクで立って参加しているメンバーもいます。そのため、一般的な会議のイメージとは大きく異なります。また、冗談を交えて話すことで、ときに大きな笑いが起こることも。

「笑いとユーモア」は、クリエイティブな発言を促すために、ガバナンスミーティングがスタートした当時から意識している点です。というのも、緊張感が高すぎたり、抑圧されている状態では、クリエイティブな発想は生まれませんし、発言のハードルも高まります。

また、Google社の研究により注目された「心理的安全性」(※)でも、心理的安全性が高い職場を示す3つのサインのうちひとつに、「職場に笑いとユーモアがある」というものがあります。

(※チームのメンバーが、自分の考えを自由に発言したり行動に移したりできる状態)

社員からのコメント

ここでガバナンスミーティングについての社員のコメントを紹介します。自分自身や会社全体の成長を感じたという声が多く見られました。

入社4年目 小西佳那

自分と周囲の発言の質にこだわるようになった

ミーティング中に、「今の発言は論点を捉えられていたかな?」などと、以前より自分自身の発言を考えるようになりました。発言するかどうか迷ったときに、以前だと言っても言わなくても変わらないと躊躇することもありましたが、今は参加メンバーに選ばれたいという気持ちが後押しして、発言数が増えました。また、参加者としての発言でも、ファシリテーターとしての発言でも、票数という結果で評価が分かるため、「あの人の意見がよかったんだ」と質の高い発言を実例から取り入れることができるのも、良い点だと思います。

入社7年目 渡山夏代

視座をあげ、自社の成長を感じる絶好の機会

業務をしているとどうしても短期的な目標や目の前の納期を優先して、視野が狭くなりがちですが、新規事業の提案でも、新しい社内制度の提案でも「この施策はイーバリューとして必要かどうか?」「今後会社としてどこを目指していくのか?」「現状の課題は何か?」など、俯瞰して考える必要があります。ガバナンスミーティングに参加することで新しい学びや刺激を得たり、重要なことを再認識することができます。新しい施策や戦略がガバナンスミーティングから始まることが多いため、イーバリューの進歩を感じられる機会としても、とても好きな時間です。

入社10年目 佐藤健

緊張感とともに高まったのは貢献の意識と責任感

一般的に会議での自分の発言が点数化される場面は少ないですが、ガバナンスミーティングでは自分の貢献度が明確に分かります。時間が浪費されているから話を展開しよう、目的にそった意見を積極的にだそうというような行動を、票数という形で評価される、投票制度を取り入れたことで、緊張感が高まりましたが、同時に議論への貢献の意識や、参加することへの責任感が組織全体として高まったように思います。

まとめ

今回はガバナンスミーティングについて詳しくご紹介しました。「部署ではなく、プロジェクト単位で業務を行う」「役職や経年ではなく、正しい意見を採用する」「中期目標の達成のために、新規事業立案が重要」などのイーバリューの特性に合わせた会議の形式です。似た特徴をもつ組織の方々、また、セルフマネジメント型組織のような、個々の社員に意思決定権があり、社員の意思によって目的の実現を図ることができる組織体系の採用を検討されている方の参考になれば幸いです。

 

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